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横浜市イギリス館は、上海大英工部総署の設計により昭和12(1937)年、英国総領事公邸として建築された。現在は、市民利用施設としてコンサートホールや会議等に利用され、正門とは別に車椅子利用者専用入口がある。建物は、コロニアルスタイルの鉄筋コンクリート2階建て、簡潔でモダンな形と伝統ある重厚な美しさに往時の英国の風格が漂う。玄関脇には、王冠とGRVI1937という文字を刻んだ銘板が往古を語り、ホールからのピアノ曲が音色を添えている。館内は、地階にワインセラー、主屋一階に応接室や食堂、サンポーチ、二階に寝室や衣装室などが配置され、東側の付属屋には、当時の食生活を支えたキッチンが威風を放つ。ハイティーや音楽を楽しんだかつての英国人の心地良い上等な暮らしぶりが蘇る。周囲をローズ・ガーデンに包まれた館の南側から、バラの樹間を通り抜ける風の道を進むと、広い庭越しに幾つもの高い煙突が聳えたイギリス館が上品な姿をしている。午後の光の下で幸福感に浸りながら、遠い「故郷」に思いを馳せるエトランジェに出会えたなら、そこはもうジェーン・オースティンの小説の世界。何度でも訪れてみたい山手の館である。(高梨)
- お話しを伺った人:
- 紹介者:NPO法人 横浜シティガイド協会